拝啓 元カレ上司サマ
仮面をつけて
岡谷夫妻は新婚初日にも拘わらず、ダブルベッドの両端を向いて、お互いに背中合わせに眠った。
普通の新婚夫婦にあるであろう“初夜”はなく、煌太が優希のおでこに、ただの労いのキスを一つ落としただけである。
煌太は優希が寝息をたてているのを確認する。
そして、これからどうしたものかと、長いため息を吐いた。
眠っていると思われた優希も、声をあげずに泣いていた。
二人の仮面夫婦生活は、ここから始まったのだった。