拝啓 元カレ上司サマ
「麗香が何時もお世話になっております。田上薬品の田上と申します。私達、お付き合いをしておりまして、課長のお話は私達の結婚式に大変役立つと思いながら聞かせて頂きました。お茶でも飲みながらもっとお話をお聞きしたいのですが、あいにく用事がありまして、これで失礼致します」
ぽけーっとしている課長夫婦をよそに、宗也は麗香の腕を取り、笑顔を保ちながら速足で去っていく。
少し歩いてから、宗也は麗香の腕を離した。
「あの、私、私ね、さっきの…」
そう言う麗香の言葉を遮って、宗也が彼女の頬を撫でる。
「もういいよ。元カレの話でしょ?俺、ある程度は知ってるし、細かい内容までは言わなくていいから!」
大丈夫だから安心してと言わんばかりに、麗香の両頬を大きな掌で包み込んで、優しいキスをした。