拝啓 元カレ上司サマ

雨がそぼ降るある日、麗香と宗也の結納は、先日の見合いの席で使った料亭で行われた。

媒酌人を任されたのは、この地方の経済界の重鎮で、全国でも名の知れた有名人だ。

やはり田上家は格上の家柄だと感じるけれど、宗也の気にするなという言葉に麗香はほっとした。

つい先日、両家揃ってこの人物宅に挨拶に出向いた時には、まさに豪邸といった感じの洋館に驚いたが、田上家も負けず劣らず豪奢な佇まいの日本家屋であるのだが。



結納が滞りなく執り行われたあとは、この料亭の懐石料理に舌鼓を打つ。

緊張から解放された両家の父親達は酒が進んで、舌も滑らかになっていく。

そこで出てくるのは、麗香と宗也の幼い頃からの話。

麗香がパパッ子だったことや、意外や意外、宗也が実はいたずらっ子で手を焼いたことなど、笑いあり涙ありのものだった。











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