拝啓 元カレ上司サマ
明け方目が覚めると、時々優希のすすり泣きが聞こえる。
煌太は気付かないふりをして、寝返りを打つ。
カーテンのしまっている窓からは、朝の気配は未だ感じられない。
再度眠りに誘われるまでの僅かな時間は、煌太にとっては苦痛である。
優希に対して、自分が不誠実な対応をしていることは自覚している。
決して優希を裏切った訳ではない。
しかし、記憶が戻って、失っていた時が動き出した今、以前と同じように優希との距離を縮めることは憚られているのだ。
何故なら、煌太の心の中には優希ではない、愛しい女性が居座っているのだから。