拝啓 元カレ上司サマ
予め自分の家族と話した煌太は、ここまでの状態になった経緯を説明した。
結婚式の前に記憶が戻っていたことと、麗香への愛情が過去のものに出来ないことを。
先ず反応したのは母親だった。
「優希さんが可愛そうだわ」
そんな言葉から始まった彼女は、嫁という立場で自分とオーバーラップして見ているようで、煌太が記憶をなくしている間、如何に優希が献身的に尽くしてくれたのか、どれだけ愛情を示してくれたのか、ついでに、岡谷家のことをどれだけ思ってくれていたのかということだった。
もちろん、それは全てが全てその通りであって、全くもって、反論の余地はない。
「分かってるよ」
そう答えるしかなかった煌太。
そして次に意見したのは姉だ。
かつて、麗香と煌太がまだ恋人だった時代に、何度か3人で食事をしたことがあったが、当時、この姉は麗香のことを大変気に入って、結構可愛がっていたはずだ。