拝啓 元カレ上司サマ

最後に、項垂れる煌太の肩にポンッと手を置いて話し出したのは、父親であった。

「煌太よ、俺はお前の気持ちが分かるよ、男同士だからな。死ぬ程愛した女を忘れられるはずはないよな。だから敢えて言わせてもらうぞ。なあ、どうしてそんなに好きだった女の手を離した?お前は、麗香さんに追い縋って別れたくないと言ったのか?それに、あれだけの美人だ。もう他の誰かのものになっているとは思わんのか?」

ああ、そうなのだ。

記憶をなくして二年あまり。

その間、麗香の存在など気にも留めず、優希との恋愛を謳歌して、そして結婚までしてしまっている。

もうどうにもならないのは、火を見るより明らかなのだから。



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