拝啓 元カレ上司サマ

見舞い客用のソファのところまで走って来た麗香は、夫の病状が悪化していることを先刻主治医から聞いたばかりで、まさかとは思っていたけれど、実際あと何ヵ月と告知されてしまうとショックで倒れそうだ。

それを夫に悟られないようにと振る舞っていたつもりだけれど、かつては当たり前だった光景が、今ではどれだけ貴重な時間なのかを考えると、余計に泣きたくなってくる。

しかし、妻として、母親としてこれではイケナイと思い直して、タオルハンカチで目元を拭く。

そして、残り少ない父子の触れ合いの手助けをしようと、小走りで病室に戻るのだった。



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