拝啓 元カレ上司サマ

それから宗也は会社を休職し─本人が復活の望みを持ち続け、退職せずに治療に専念するため─愛妻と子供達との生活だけに全力投球出来ることが、どれだけ幸せなことなのかとしみじみ噛みしめていた。

その宗也の愛妻はと言うと、二人抱き締め合って話したあの夜からずっと何をするのも夫と一緒だ。

宗也がトイレに行く時にも、あたかも御主人様を待つ愛犬のようにしっぽフリフリでドアの前で待ち、一瞬たりとも離れたくないと、普通だったらきっと鬱陶しがられるだろう。

だがしかし、宗也は宗也で、最期まで付き従うと言ってくれる麗香のことが愛しくて、笑顔で好きなようにやらせている。

もちろん子育てだって二人で一生懸命で、体力がなくなって来ている宗也の負担にならないようにと、麗香は始終気を配る。




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