拝啓 元カレ上司サマ
麗香は期待などしていない。
煌太が忘れてしまったのは、麗香のことだけ綺麗さっぱり。
いっそ、清々しいくらいに。
そう、彼は、二人の出逢いから怪我をした時までの全部が全部、すっぽりと記憶が抜け落ちてしまったのだ。
麗香は己のせいだと、責めていた。
父親のしでかしたことだけに囚われて、煌太の気持ちなど二の次で、常に麗香自身の感情を優先してきたのだから。
煌太の麗香との思い出は、残す価値もないのかも知れない、などと考えている。
これもそれも、何もかも全て麗香自身の自業自得。
だから、麗香はもう期待などしない。