今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
店員さんが陽気にあいさつをしてくる。
高い天井。
床一面を覆うワインレッドのカーペット。
奥のホールからは大音量の音楽と色鮮やかな光がもれていた。
私は落ち着かない気持ちで店内を見渡す。
響平は、まだいないのかな……?
ここから見た感じ、いないみたいだけど……
もしかして奥にいるのかな?
カウンターに目を向けると、マスターらしき人と視線がぶつかった。
バッグの中からチェーンネックレスをこっそり取り出して、ポケットに忍ばせる。
「ちょっとごめん」と美月ちゃんに声をかけて席を立ち、カウンターに向かった。
「あの……こんばんは」
遠慮がちに声をかける。
「可愛いお譲さん、いらっしゃい」
「すみません。響平が今日、ここに来るって聞いたんですけど……」
「ああ。響平なら、さっき出ていったよ」
「えっ?」
「まだ5分も経ってないし、追いかけたら間に合うんじゃないかな」
響平が、まだ近くにいる?
ポケットの中のネックレスをぎゅっと握りしめた。