今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
響平は涼しい顔のまま、隣の男の子に話し掛けた。
「そうだ、椿。兄ちゃんに、明日の夜、摩天楼に来いって言っといて」
「はっ、はい……!」
名前を呼ばれただけで、ぱっと嬉しそうに顔を輝かせたその子
─―椿くんは、深くお辞儀をして去っていった。
その背中が見えなくなると、響平の黒い瞳が再び私を捉える。
「今の、泉の弟」
「えっ。そうだったの?」
頭の中でふたりの姿を照らし合わせてみた。
言われてみればたしかに人懐こい雰囲気が似ている。
泉くんも少しハスキーな声をしているから、もう少し大人になれば、あんなふうになるのかもしれない。
「私、道に迷っててね。さっき椿くんが声を掛けてくれたんだ」
「はあ? 迷ってたのかよ。よかったな、俺がここ通って」
「うん……」
椿くんがいなくなって、薄暗い路地にふたりきり。
いやでも自分の心臓の音が聞こえてくる。