今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
「別に。お前が引き止めてほしそうな顔してたから」
さらりとそんなことを言う。
そんなの嘘。
口から出任せ。
だって別れ際、目が合ったのなんて、ほんの一瞬だったのに。
「私そんな顔、してないよ……っ」
「ふうん?」
「見えてなかったくせに、テキトウなこと言わないで」
「じゃあ、なんて言ってほしいわけ」
距離を詰められて肩が当たり。
それから間もなく、響平の唇が耳元に近づいてきた。
「“クニヨシ君のとこに、行かせたくなかったから”」
「……っ」
「……とか?」
やけに色っぽい声が鼓膜を揺らす。
少女漫画にありがちなセリフをなぞっているだけなのに、どうしようもなく胸が高鳴る。
「“瑠花は俺のものだろ”」
軽く笑いを含んだ声。
からかっているのが丸わかり。
「どこで覚えてくるの、そんなセリフ」
流されたくなくて、冷静なふりをした。