今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
何度か角を曲がり、細い道を進んだ先で、響平は足を止めた。
「もう、すぐそこだ」
柔らかく笑った顔が月明かりに照らされて、それがとても綺麗だった。
「すごい、……こんなところもあったんだ……!」
手を引かれて辿り着いた先は、ビルを抜けて、少し開けた場所にある湖だった。
月が池の水面に映っていて幻想的。
湖の柵に沿って白い花が並んでいて、ここが暗黒街だってことを忘れさせてくれそうだった。
「クニヨシ君に1時間で帰すっていったの失敗したな。てか、もう40分も経ってんの早すぎだし。時間いくらあっても足りなくね?」
そう言って私の肩を抱きよせた。
騒ぎ立てる胸をおさえながら、じっと身を寄せた。
花が咲き乱れる湖を見ながらふたりきり。
おとぎ話のようなシチュエ―ションに、このまま時が止まればいいのにと思う。
湖にいた時間はたったの10分ほどだったけど、泣きたいくらい幸せな気持ちに包まれた。