今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
「月が出てねぇな……」
ひとり言のようにそうこぼした彼は、ビルではなく、ビルの隙間からのぞく夜空を見ていたらしい。
つられて顔を上げる。
曇っているわけじゃない。
星は光っている。月だけがない
──新月。
「なんか、いつもより暗い気してたんだよな」
そのセリフも私に向けたわけではないようで、彼はそのまま身を翻し、遠ざかっていく。
背中がとうとう見えなくなったとき、ようやくハッと我に返った。
帰らなくちゃ。
どうやら“今日”は、危ないらしい。
彼はたしか、会合が始まると言っていた。
詳しくは分からないけれど
このままここに居たら、討ち払われる──と。