今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
ここは治安の悪い街。
怒鳴られるかもしれないと思い、すぐさま頭を下げる。
「すみません……っ」
「ああ。こっちこそよそ見してて……」
返ってきたのは、知ってる声。
顔を上げると、相手も同じことを思ったらしく視線がぶつかった。
「あれ、瑠花ちゃん」
目を丸くしたのは泉くんだった。
「え? 響平と一緒じゃなかったの?」
「泉くんこそ、倉庫にいたんじゃなかったの?」
「それがさー、響平のやつ、いつもと違う煙草買ってきやがったの。だから買い直しに」
「そうだったんだ」
「てか瑠花ちゃんたちもう帰んの? 響平と一緒にいなくていーの? 彼女なんだし、今日も泊っていけば?」
響平とはさっき別れたし。
たぶん──もう、会うことはないと思う。
「あのね、私。ほんとは響平の彼女じゃないんだ……」
「えっ?」
「前に、ここで怖い人に絡まれたときに、彼女だって嘘をついて守ってくれただけなの。……だから、ここに来るのも、もう終わりにする。今までありがとう」