今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -



「違ってたらすみません。もしかして、その人って、……“夕立”って苗字の女の人ですか……?」



声が震えてしまった。

北村さんは目を丸くする。



「そうそう! 瑠花ちゃん、もしかして知り合いなの?」

「……っ」



熱いものがこみ上げてきた。

嘘……ほんとうに?



響平のお母さんが、意識を取り戻した。

きっと、響平が何度も願ってやまなかったこと─―。



知らせなきゃ。
でも、どうやって。

響平は、あの街から出られないのに……。



焦る気持ちが涙に変わる。



「瑠花ちゃんっ?どうしたの、大丈夫?」

「……っ、すみません。私も連れていってくれませんか……? 夕立さんの病室に」


「えっ?」

「迷惑なのはわかってるんです。それでも……」



私の背中を北村さんは優しくさすってくれた。



「うん、わかった。一緒に行こうね。先生にはわたしから伝えるし、状態が安定したら快く中に入れてくれると思うよ」


北村さんの腕の中で泣く私は、本当に子どもみたいだった。

< 298 / 327 >

この作品をシェア

pagetop