今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -


外に出ると小雨が降っていて、寮から持ってきた水色の傘を差して病院まで歩いた。


北村さんの話によれば、響平のお母さんの病室に、ときどき、花が置かれていることがあったらしい。


メッセージなどは一切なく、面会者の名簿にも名前は記されていない。

……いったい誰なんだろうと、一時期ナースステーションの中で話題になっていたとか。




午後7時30分。

入室が許可されるまで待合室で待たせてもらえることになり、椅子に座ってひとまず気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。



私が来たところで、意味がないのはわかってる。


響平のお母さんは、私のことを知っているわけでもないし……。



病室に入らなくてもいい。

ただ、姿を見るだけでいいの。

響平が必死に守ってきた、優しい人……。



すぐに会うことはできなくても、響平には、どうにかして知らせたい……。

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