今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -


機会を改めたほうがいいかもしれない。


それでも、いったい誰なんだろうという純粋な疑問が湧いてきて、病室の中に再び
目を向けた。



男性は無言のまま、眠っている響平のお母さんを見下ろしていて、両手で包むように白い手のひらを握っていた。


──この人は、響平のお母さんのことをとても大切に想ってる。

そう思わずにはいられなかったから。



響平には他に頼れる人がいなかったと、泉くんが言っていたのを思い出す。

……だとしたら、この人は?



いくら考えても、思い当たるのは一つしかない。

──響平の、お父さん。



そうだ。

母子家庭という話ではあったけれど、お父さんが亡くなっているなんて、泉くんはひとことも言っていない。



でも生きているなら、どうして響平を助けてあげなかったの……?



ぎゅっと拳を握りしめたときだった。

私の気配に気づいたのか、男性がふいにらこちらを振り返った。
< 302 / 327 >

この作品をシェア

pagetop