今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -


「わあ……っ」


闇に浮かんだ光たち。

様々な色を纏ったビル灯りが、この街の輪郭を教えてくれる。
ぼんやりとしているけれど、決して黒に呑まれることはないと思わせる強さがあった。



「綺麗だね……」


ガラスに張りつくようにして見惚れてしまう。


「ここからしか見えない景色なんだよ。この街の全部を見渡せる、唯一の部屋」


……ここからしか見えない景色。

そうだ。ここはタワーマンションの最上階。



「ほんとに綺麗。こんなの初めて見た……」

「だろ」


再び私を見た響平は、さっきとは違って、どこか皮肉めいた笑みを浮かべていた。



「ここの暗さも冷たさも、全部上手に隠してんだよ」


小さく落とされた声。

意味を理解して、ハッとする。


眼下に広がる景色を心から綺麗だと思った。


……綺麗すぎて、つい忘れてしまうんだ。

この光は街の本質を見失わせる。


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