今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
「そんなわけない……。だいたい、話したのだって昨日が初めてで、そもそも私は──」
──本当の彼女じゃないんだから。
そのセリフは呑みこんだ。
響平が守ってくれた事実を台無しにしたくなかったから。
「なんでもない」と言って口をつぐむ。
「そういや。前にあいつ、忘れられない子がいる、みたいなこと言ってたけど、もしかして瑠花ちゃんのことだったりする?」
街の出口まであと数十メートルという地点で、思い出したようにそう言った泉くん。
ドキッと心臓が跳ねた。
忘れられない子。
──私じゃない。
私なわけがない。
いくら記憶をたどっても、夕立響平という名前の男の子も出会った思い出なんて、存在しなかった。
そうだったらいいのに、と思う。
そして、絶対にないとわかっていても、少しだけ期待してしまう。
私が思い出せないだけで、昔、どこかで会っていたりしていたのかもしれない。
それを響平が覚えていて、声を掛けてくれた……。
──そんな夢話。