今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
「こ、ここには自分で来たんです」
「はあ?」
「あの人たちには、入り口で捕まってホテル街に連れてこられただけで……」
「ちょっと待て。あんた、ひとりだよな」
「は、はい」
「へえ。見かけによらず度胸あんだ」
それだけ言うと、恐らく出口のほうへと歩き始めるから慌てて引き止めた。
「あのっ、私まだ目的を果たしてなくて……!」
「目的?」
「この街に、お花屋さんがあるって聞いてきたんです、けど」
彼が振り向く。
「ああ、花屋か」
どうやら本当にあるらしい反応にびっくりする。
治安の悪いこの街にお花屋さんが……。
「けど、なんでわざわざここまで来んだよ。花屋くらい外にもあんだろ」
――そう。
お花屋さんなら、この街以外にも存在する。
それなのに、なんでわざわざ。
そう聞かれるのも無理はない。
でも私がこうして、しかもひとりでお花屋さんを求めてこの街に来たのには、ちゃんとワケがある。