今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
「ああ、うん。ちょっとね」
笑って誤魔化す。
内心、とても不安だった。
どれだけ掛けても、響平通話に出ないから。
間を置きながら、もう5回は掛けた。
結局、当日まで勇気が出なくて、今朝ようやく踏み出せたというのに、この結果。
何度か呼び出しても返事はなく、途中で電子音が切れたかと思えば、留守番サービスに接続される。
私だってほんとは街に行きたかった……。
心のどこかで響平に会う口実ができて嬉しいって思ってる。
「今日は本当に気をつけようね?少しでも危ないと思ったら、すぐに帰ろ?」
響平が守ってくれるだろうと甘く見ていた私は、予想外のことに焦りを感じ始めていた。
夜までまだ時間はあるけど、このまま響平が出てくれなかったら──。
「瑠花ちゃんってほんとに心配性だね。大丈夫だよ~国吉くんもいるんだから!」
「うん。それはそうなんだけど……」
別の不安も芽生えてくる。
響平が、ネックレスを忍ばせたことすら忘れて、もう私のことなんかどうてもよくなっているんじゃないかと。
私の名前も、顔も、とっくに記憶からなくなっているのかもしれない……
そう考えると悲しくなった。