秘密にしないスキャンダル
「隆君！」

「俳優の一ノ瀬隆矢だ！」

「一ノ瀬さん、話を聞かせてください！」

「恋人のユウナさんのスキャンダルに関するコメントを……！」

標的が隆矢に向いたのか、こっちを見ていたマスコミは全員隆矢の方へ向いて駆け出そうとした。

ああ、また押し合いになってる……！

勇菜がハラハラしながら見ているとマスコミからどよめきが上がり、次の瞬間人集りを掻き分けた隆矢が飛び出してきた。

「ユウナ、大丈夫？」

「隆君、迎えに来てくれたの？」

手を握り心配そうにどこも怪我をしていないかを確認したらしい隆矢は暫くすると安心したように微笑んで頷いた。

「ユウナは局内で待ってろって言ってたけどやっぱり心配だから。
その……大事な彼女だし」

「隆君……」

照れたようにはにかみながら“彼女”だと言う隆矢に勇菜は嬉しそうに微笑むと、すぐにマスコミに囲まれカメラを向けられた。

「一ノ瀬さん、ユウナさんは本当に彼女なんですか？」

「昨日からユウナさんの浮気が話題ですが、それについて一言……」

「浮気……？」

一人の人が発した“浮気”と言う言葉に隆矢が反応すると、握っていた手を引っ張られ勇菜は隆矢に抱き締められる形で腕の中に収まっていた。
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