秘密にしないスキャンダル
「やっぱり認められない」

そうはっきり言われた後、勇菜は俯き包み込んでいた隆矢の手をぎゅっと握り直した。

「勇菜？」

「……や」

小さく呟いた言葉はすぐ隣にいた隆矢にも聞こえなかったようで、その場にいた全員が、ん？とこちらを伺い見ようとした時、勇菜は顔を上げて思いきり叫んだ。

「お父さんのわからずやっ！！
もうお父さんなんか知らないっ！！」

「えっ！ちょっ……勇菜っ！？」

勇人に向かって怒ると隆矢の手を力の限り引っ張り勇菜はそのまま店を飛び出した。
引っ張られるままの隆矢が慌てて振り返ると、そこには目を丸くしている陽菜と真未、呆れている堀原に楽しそうに目を細めている陽人と朝陽の姿が見えたけれど、肝心の勇人は後ろ姿しか見えてなかったのでどんな表情をしているかわからなかった。

「勇菜、越名さんと喧嘩してどうするの」

「知らない」

「越名さんの言い分もわかるし、俺、ちゃんと認められるように頑張るからとりあえず謝りに戻ろう」

俺もちゃんと謝るから。と言われ勇菜は早足で歩いていた足を止めた。

「戻らない」

「え？」

「戻らないし謝らない……家出する！」

そう言い放つと隆矢は目を見開いて、ええっ！？と慌てだしたが勇菜はそれに構うことなくたまたま通りかかったタクシーを呼び止めた。
隆矢を押して無理矢理入らせてすぐに勇菜も入ると目的地を運転手に告げた。
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