秘密にしないスキャンダル
「ど、どうしよう勇人さんっ!
勇菜が飛び出していっちゃった……!」

勇菜と隆矢の姿が見えなくなった頃、陽菜は勇人を懸命に揺さぶっているが勇人は無言のままだった。

「落ち着いて母さん、隆矢が一緒だから大丈夫だよ。
それより父さんのことを心配してあげなよ」

「え?」

呆れながらそう促し、陽菜が動きを止めて勇人を伺い見ると勇人は打ちひしがれた表情でどんよりとした空気を纏い、今まで見たこともないような状態で立ち尽くしていた。

「ゆ、勇人さん……?」

「勇菜があんな風に反抗したの初めてだからそれだけショックが強かったんだろうな」

「遅い反抗期ってこと?」

「反抗期……」

陽人と真未の言葉に勇人はさらに気落ちしたようで力なく呟いた。
そんな勇人を拓也が励ましながら近くにあった椅子に座らせていると陽人のスマホにメッセージが入った。

「……とりあえず今夜は隆矢が勇菜を預かるって。
近いうちにまた父さんと話したいっていってるけど」

「……話したくない」

「……“お父さんのわからずや”」

勇人にとって隆矢はまだ突然現れて愛娘をかっさらおうする男としか思えないのだろう。
話したくないと呟く勇人に勇菜の声色を真似して先ほど言われた言葉を言ってみるとさらに気落ちしてしまった。

そして陽菜にみっちり怒られた。
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