秘密にしないスキャンダル
『では引退の理由を聞かせてください』

『……自由に動けるように、です』

そう言った美佐の言葉に記者達がざわつくと美佐は再び口を開いた。

『女優として活動していましたがプライベートなどいろいろな事が制限されて自由な時間などはほとんどありませんでした。
なので、今後は誰の目も気にせず自由な時間を過ごしたくて引退を決意しました』

「自由な時間……」

美佐の話した言葉の一部を拾い呟くと、陽人と朝陽が顔を見合わせていた。

「これ、まずいな」

「うん、かなりまずい」

二人の呟きに隆矢と首を傾げ、再び記者会見の画面の方を見ると美佐は真っ直ぐカメラを見つめて微笑んでいたけれどその目は笑っていなくて、それだけが勇菜は引っ掛かったのだが陽人と朝陽の様子から他にも何かあるようだと勇菜は眉を潜めた。

「勇菜、俺はもうちょっと朝陽君と作戦会議してるから早めに帰れ。
……隆矢、時間があるなら勇菜を送ってくれるか？」

「それはもちろん……。
初めからそのつもりでしたし」

「頼んだ。
後で連絡するから」

そう言われてほぼ無理矢理店から追い出されてしまった二人は納得のいかない表情で家路についた。
美佐の引退と陽人達の様子にどことなく不安を感じ、繋いでいた手を少し強めに握った。
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