秘密にしないスキャンダル
握手会も反省会も終わり、陽人は堀原とまだ話すことがあると言うことで勇菜は一人で外に出た。
嫌がらせが始まってからずっと誰かが傍についていたので一人きりというのは久々だったのだけれど、関係者用の出入り口から出た瞬間に現れた人物に勇菜は目を丸くした。

「お疲れ様」

「隆君?どうして……」

握手会で着ていた服とは違う服装で近くの壁に凭れていた隆矢は柔らかく微笑みながら勇菜に近付くと、そっと頬を撫でた。

「……心配だったから」

「心配?」

「最近、嫌がらせが多いんだろ?」

そう言われて勇菜は複雑な表情を浮かべながらも懸命に微笑んだ。
隆矢が頬を撫でていた手を下ろし勇菜の手を握ると、駐車場に車を駐めてるから行こうか。と一歩踏み出した。

「あのね、私、全ての人に好かれたいとも思ってないし好かれてるとも思ってない」

ゆっくり夜道を歩きながらポツポツと話してみると隆矢は振り返らずに、うん。と相づちを打った。

「みんなに好かれるのは無理だろうし、嫌いだと思ってる人もいるのは理解してる。
だけど……あからさまな嫌がらせのプレゼントや手紙とかは、正直凹んじゃうね」

口調だけは明るく、何でもなさそうに言ってみるけれど隆矢は勇菜の心境に気付いているのか握っていた手の力を少しだけ強めるとほんの少しだけ早足で歩いた。
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