秘密にしないスキャンダル
「あとさ、もう一つ言っていい?」

「ん……なに?」

「勇菜さ、握手会の時にファンと親しすぎないかな……?」

「え?」

「いや、その……ほかの人が勇菜のその人柄に勘違いして好きになられたら困るしさ……」

まごつきながら言う隆矢に勇菜は、ふふっ。と笑うとぎゅっと抱き付いた。

「大丈夫。
勘違いされるようなことはしないし、あんな表情させるのも多分隆君一人だけだから」

「あんな表情って……え?
勇菜、もしかして……」

「……大好き、隆君。
ずっと握手会に来てくれててありがとう、“シキテンさん”」

「っ……参ったな……」

いつ気付いたの?と聞かれて内緒だと答えると隆矢は苦笑した。

「じゃあ、そろそろ教えてよ。
“シキテン”って何?ずっと気になってたんだけど」

「それはね……」

抱き合いながら変装した隆矢が“シキテン”と呼ばれるようになった理由を話した。
その間も隆矢は優しく頭を撫で続けているものだから、最近の嫌がらせで若干凹んで精神的にしんどくも感じていた勇菜はライブの疲れもあってやがて寝息をたてて眠ってしまった。

勇菜が眠って暫くしてから、そろそろ勇菜を自宅へ送り届けようと隆矢が身動ぎしたその時に窓ガラスをノックする音が聞こえた。
首だけ振り返りノックした人物を見ると隆矢は驚きのあまり目を見開き、越名さん……。と呟いた。
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