秘密にしないスキャンダル
「隆君?もしかしてどこか……」

「何でもない、大丈夫」

「大丈夫じゃないでしょ、どこ!?」

慌ててしゃがみこみ目に見える範囲で怪我をしていそうなところを確認していくと、床についていた右手首が腫れているのに気付いた。

「これ……」

「っ……!」

少し触れただけでも激痛が走るのか、明らかに痛みを我慢しているような表情の隆矢に勇菜が混乱していると、先程とは違う靴音が近付いているのが聞こえてきた。

「勇菜、遅いから様子を見に……」

「堀原さんっ!
どうしよう、隆君が……っ!」

涙目になりながら階段下で座り込み堀原を見上げる勇菜と、同じく座り込み顔をしかめている隆矢を一目見て何かあったと感じとった堀原は早足で階段を下りるとすぐに勇菜とは反対側に腰を落とした。

「隆君が私を庇って右手が……」

「見せてみろ」

腫れている手首を動かさないように堀原が隆矢の怪我の状態を確認していると、徐々に堀原の眉間に皺が寄っていった。

「これは骨折してるかもしれないな……」

「こっ……!」

あまりの衝撃に溢れそうなほど目に涙を溜めて隆矢を見ると、隆矢は苦笑して左手で頭を撫でてきた。

「大丈夫、心配しないで」

「だって、こんなに腫れて……」

「うん、でも大丈夫」

勇菜を守れたからね。と目を細めて優しく微笑まれ、とうとう勇菜は涙を流した。
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