秘密にしないスキャンダル
「で、結局ヒビが入ってたのか」

「全治一ヶ月くらいかかるって……。
利き手なのに、ドラマの撮影中なのに……どうしよう……」

どうしようもないよー!!と自宅のテーブルに突っ伏して泣いていると面倒臭そうに陽人が肩を叩いた。

「隆矢の事務所は何て?
行ってきたんだろ?」

「うん……私を庇ったせいで怪我させてごめんなさいって堀原さんと謝ってきた。
隆君も事務所の社長さんも悪くないって言ってくれたんだけど……」

「だけど?」

「草野さんにはうちの事務所と一緒にしかるべき対応をとるかもって」

「ま、当然だな」

ソファーにふんぞり返っている陽人は、勇菜が受けた嫌がらせの証拠も朝陽君と集めてるから心配するな。と言っていたが勇菜は何も安心できなかった。

「利き手が使えないってすごく不便だよね……。
何か手伝えることないかな……」

「泊まりがけで介抱しに行ったらいいじゃん。
隆矢の家で同棲するいい口実にもなるし」

「そっか、介抱しに行けば少しは手伝え……」

「却下」

仕事中でいなかったはずの勇人の一刀両断する声が聞こえ勇菜はじとっと視線を向けた。
隆矢との婚約を認めないと言われて一日だけの家出をしてから初めて顔を合わせるのだけれど、勇菜は勇人の無慈悲な態度に反論しようと立ち上がった。

「お父さん、隆君は……!」

「介抱しに行くのは許可出来ないが……」

勇人が小声だけれど出した提案を聞いて、勇菜と陽人は溢れんばかりに目を見開いた。
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