秘密にしないスキャンダル
「体を張るだけが“守る”ことじゃない」

「……はい、わかってるつもりです」

「なら、ちゃんと守れたら改めて挨拶においで」

今勇菜を守れるのは君だけのはずだから。と勇人が言って二人分の靴音が遠ざかっていくのが聞こえた。
暫くしてこちらに誰かが来る気配がしてじっと仕切られていたカーテンを見ていたらそっと隙間から隆矢が顔を出した。

「勇菜……起きてたの?」

「うん、ついさっきね」

起きていると思っていなかったらしい隆矢は勇菜と目が合ったことに一瞬驚いたようだが、すぐに目を細めて微笑む。
そんな隆矢に勇菜も微笑むと、ベッドの縁に腰掛けた隆矢がそっと勇菜の頬に手を添えた。

「よく眠ってたけど体調は?」

「大丈夫、ぐっすり寝たおかげでいつもより元気かも!」

そう言って力こぶを作るように右腕を曲げて笑って見せると、隆矢は困ったように微笑んで頬をそっと撫でてきた。
おや?と首を傾げていたらゆっくり隆矢の顔が近づき、やがて額が合わさった。

「勇菜が無事で良かった……」

「うん……心配かけてごめんね。
助けてくれてありがとう」

微笑んでそう言おうと思ったけれど上手く笑えず、頬に添えられた手にそっと触れようとした手は微かに震えていて、あれ?と勇菜が戸惑いかけたときに隆矢は勇菜の手をしっかり握った。
< 185 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop