秘密にしないスキャンダル
「いつも笑顔だけど気付かれないように震えてるのを見ているうちに健気で可愛いなって、いつの間にか好きになっていったんだ」

元から大ファンで好きだったのもあるけどね。と微笑む隆矢に戸惑っているといつの間にか震えは止まっていて、それに気付いた隆矢は手の甲にそっと口付けた。

「だからこそ草野さんの言葉が許せなかった。
ヘラヘラ笑ってチヤホヤされるだけのアイドル、実力不足でドジばかり……」

「そ、それは本当のことで……」

「違うよ。
震えながらも懸命に笑顔を忘れない、緊張のあまり失敗することある……そんな姿をみんなに見守られてる、勇菜は誰からも愛されてるアイドルだよ」

「そんなこと、ないよ……そんなこと……」

現に隆矢絡みだとしても美佐にはあれだけ嫌われていた。
他にも嫌っている人が少なからずいるはずだとわかっている。
けれど、今まで出会ったファンやスタッフ、共演者の人達の笑顔が浮かんできて勇菜はいつの間にか視界がぼやけてきたのに気付いた。

「りゅ……隆君ちょっとどいて、離れて……」

「離れないし、どかないよ。
泣いていい、勇菜はたくさん頑張ったから」

「っ……」

優しい眼差しに我慢できずに強く目を閉じるとポロポロと涙が溢れてきた。
陽人やみんなの前で強がっていた気持ちは全て見透かされて隆矢によって涙として流されてしまった。
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