秘密にしないスキャンダル
「ユウナちゃん、今日どうしたの?体調不良?」

「いえ、体調は万全ですけど……」

どうしてですか?と首を傾げると握手をしている目の前の人は、今日のライブで何も失敗してなかったから。と即答した。

「……私、失敗しないと心配されるんですか」

眉を潜めて不満気な顔をするとその人は、失敗しない日がないから珍しくて。と何の悪意もなく言われて勇菜は肩を落とした。

「体調は良いんですよ、ただ……」

「ただ?」

「好きな人のことを考えるとどこかボーッとしちゃいがちで……」

そう呟いた瞬間、ゴホゴホッと誰かがむせて咳き込んだ声が聞こえてきた。
ん?と思ってそちらを見てみると、そこにはいつもの格好のシキテンさんが咳き込んでいた。

「シキテンさん?どうしたんですか?大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……。
ていうか“シキテン”って誰……?」

吃りながらも答えたシキテンさんの眼鏡の奥は若干涙目で、咳き込んで苦しかったのがよくわかった。
大丈夫だろうかと心配してじっと見ていると、まだ握手をしたままだった人が目を丸くしていた。
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