秘密にしないスキャンダル
「さあ、挨拶も終わったから座ろうよ。
隆君ここに座って、お兄ちゃんの隣!」

ほら、お父さんも座ってよ!とじっと隆矢を見ていた勇人の背中を押して定位置に座らせると陽菜と一緒にキッチンに入った。
みんなで食べようと朝から頑張って作ったクッキーを用意しているその隣で陽菜はくすくす笑いながらコーヒーとカフェオレを用意していた。

「お母さん笑ってどうしたの?」

「んー?勇人さん……お父さんのあんな顔初めて見たなぁって」

「あんな顔?」

不機嫌そうなオーラを纏って口数は普段のように少なかったが表情に変化があっただろうかと首を傾げると陽菜は、わかりにくいわよね。と笑った。

「お父さん、複雑そうな顔してたわよ?
小さいときから勇菜を可愛がってたから、隆君を連れてこられて寂しくなっちゃったのかも」

「えー?寂しがることないのにー」

結婚の挨拶でもなければ同棲の挨拶でもない。
ただ単に“お付き合いします”という報告に来ただけなのにと呟くと、勇菜もいつか子供が出来たらわかるわよ。と微笑まれた。

クッキーとコーヒーとカフェオレを持って戻ってくると、陽人を挟んで無言で座る二人はお葬式のような雰囲気だった。
勇菜は思わず陽菜を見て、陽菜は眉を下げて微笑んだ。
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