秘密にしないスキャンダル
「そういえば今日も来てましたね、シキテンさん」

「シキテンさん?」

そんな名前のスタッフさんいたかな?と首を傾げると、隣に座っていた人が、常連さんのことだよ。と教えてくれた。

「珍しい名字ですね。
どんな風に書くんですか?」

「名字じゃなくて愛称です。
一度見たら忘れられないほどインパクトがある格好してるからみんなで勝手に呼び名を考えたんですよ」

実はそんな風に勝手に愛称つけてる常連さんいっぱいいるんですよ。と教えられて勇菜は、へー。と感心していた。

「それで、そのシキテンさんってどんな人なんですか?」

「目深に帽子をかぶって眼鏡をかけたマスク姿の男性です」

「あ、あの人……」

確かに今日も印象的な格好で来てた。
毎回ほんの少ししか話さないのに覚えているのもインパクトがある格好のせいだろう。
 
「でも、なんで“シキテンさん”なんですか?」

「シキテンって“見張り”っていう意味の警察用語らしいんです。
その人の見た目から警察の人が何かを見張ってるみたいだなぁって話してて」

「なるほどー」

確かに言われてみたらそうかもしれない。
うんうんと納得して頷くと、はて?と首を傾げた。

「それでシキテンさんは何を見張ってるんでしょう?」

「勝手につけた愛称なだけで本当に何か見張ってる訳じゃないからな?」

間違っても本人に直接聞くなよ?と陽人に疑いの眼差しを向けられ勇菜は肩を竦めた。
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