秘密にしないスキャンダル
「勇菜……」

名前を呼ばれてそっと抱き締められるとさっきまで緊張して固まっていた体の力が徐々に抜けていき、その様子に気付いた隆矢はふっと笑ってそっと頭を撫でた。

「まさか大ファンのアイドルが俺と付き合ってくれると思わなかった。
ありがとう」

「私だって、初恋が実ると思わなかった。
好きになってくれてありがとう」

「どういたしまして」

お礼を言い合って微笑むその顔はお互い赤くて、ふふっと笑っていたらゆっくり顔が近づいてきた。
乗っているゴンドラはもうすぐ頂上につく。
自然と瞼が下りていき完全に閉じると同時に唇が重なった。

触れるだけのキスはすぐに離れ、至近距離のままお互い見つめ合うとまたどちらからともなく目を閉じてキスをした。
何度かそれを繰り返し、そろそろ他のゴンドラからこちらの様子が見えるかもしれなくなった頃にようやくキスがやんだ。

「……恥ずかしいね」

「うん」

「観覧車の頂上でファーストキスなんてロマンチックだよね」

「ファーストキス……」

「そうだよ?だって、初恋なんだもん」

「……責任はちゃんととらせて頂きます」

えー?責任とかはいいよー。とクスクス笑いながら隆矢の肩に頭を乗せて、でも……。と呟いた。

「責任とかじゃなくて、ずっと一緒にいたいなって思ってくれたら嬉しいな……」

「うん、俺もそう思う」

勇菜の頭に隆矢が頬を寄せた気配がした。
観覧車がずっとこのまま回り続けてくれればいいのにと思いながら勇菜はそっと目を閉じた。
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