秘密にしないスキャンダル
「……と言うわけで、映画の主題歌を歌うことになったの。
みんなで頑張って良い曲を作るからね」

『そっか、楽しみにしてる。
なんか、初めて主演する映画に勇菜も携わってるとなったらすごく嬉しい……今まで以上に頑張れそう』

「隆君……たまにすごく恥ずかしいこと言うよね」

『言ってる俺もかなり恥ずかしいんだよね』

と照れ笑いしているかのように話す隆矢に勇菜も照れてしまう。
ほぼ毎日電話しているけど耳元で隆矢の声が聞こえるのがくすぐったく感じて仕方がない。

話題を反らしマネージャーが出来たことを告げようと、あのね。と口を開いたその時に電話の向こうから、隆矢君!と女の人の声が聞こえた。

『草野さん?どうしました?』

『もうすぐ休憩終わるし監督も呼んでるよ?
一緒に行こう?』

『わかりました。
ごめん勇菜、何か言いかけてたけど……』

「ううん、大丈夫。
お仕事頑張ってね」

『うん、ありがとう』

プツッと切れた電話の画面をじっと見つめた後、勇菜はそっとテーブルにスマホを置いた。
隆矢に声をかけた女性は確か草野美佐(くさの みさ)と言って新人でもベテランでもない、所謂中堅の女優で今回の映画のヒロイン役だ。
甘さを含んだ声で隆矢に話しかけていたようだが気があるのだろうかと勇菜はスマホを無言で見つめた。
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