秘密にしないスキャンダル
「あー、久々に疲れたな。
腹立つ奴もいたし、もう二度と来ねー」

「そうだねー。
私ももう来たくないかな」

編集室を出たところで陽人と待ち合わせ、車を回しに先に外へ行った堀原の元へ二人でゆっくり向かっていると後ろから誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

「陽人君!……勇菜!?」

姿を現さなかったからいないと思っていたのか陽人の隣にいた勇菜を見て驚いた様子の隆矢に勇菜は笑顔を向けた。

「おはよう、隆君。
撮影お疲れ様」

「勇菜……今までどこに?」

「編集室。
モニターで撮影の様子見てたよ」

クールな隆君も格好良かったね。と言うと隆矢は唇を引き結び複雑な表情をした。
おや?と首を傾げると大股で近寄ってきた隆矢に両手を握られじっと見つめられた。

「見てたよね?
その、草野さんが撮影中でもないのに抱きついたりしてたの……」

「ああ……ごめんね?見ちゃった」

手を握られたまま苦笑すると隆矢は眉を下げて、ごめん。と呟いた。

「どうして謝るの?」

「勇菜っていう彼女がいるのに振り払えなくて……」

「……初主演の新人さんが経験ある中堅女優さんに強く出れないのはよくわかってるつもりだよ」

これでも芸能一家の一員として小さいときからたくさんの現場に連れていってもらい、様々な人達を見続けていたので上下関係の厳しさはよくわかっている方だと自負していた。
それでも申し訳なさそうに眉を下げる隆矢に気にしていないと笑顔を見せていると、隆矢の腕を陽人が掴んだ。
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