秘密にしないスキャンダル
「それってもしかしなくても私のことですよね。
わざとドジが出来るくらい器用ならいいんですけど……そうしたらハルトに怒られなくてすみますから」

「……ハルト君、怒ったりするんですか?」

「それはもう、すっごく怒ります。
そしてその日の夜は確実に魘されます」

そう言うとスタジオではさっきまでの雰囲気を若干取り戻して司会者の女性がほっと胸を撫で下ろしていた。

「今から歌っていただく曲は今日ゲストで来ていただいている草野さんも出演している映画の主題歌だそうですが、作るまでに何か大変だったことや失敗はありましたか?」

「この流れで失敗を聞いちゃいますか?」

眉を下げてうーんと悩み始めると陽人が、俺は失敗じゃないですけど……。と前置きをして話始めた。

「監督から主題歌の話をいただいたんですが、要望が“メロディアスな曲で”だけだったんです。
メロディアスって旋律が美しいって意味なんですけど人によって感性が違うので、曲に関わってくれた人達に納得してもらう曲を作るのが大変でした」

「ハルト君の努力が詰まった曲ということですね。
ユウナちゃんは何か失敗はありますか?」

「なんで私だけ失敗の話なんですかー」

眉を下げて不満を露にするも、これといった失敗はー……。と呟いて、あっ!と思い出した。
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