あなたが私を忘れても、私はずっとあなたを忘れない
「まずはやっぱり手話だな!」

グループになってすぐ、太陽が口を開く。太陽は手話を習っているのだ。手話で「こんにちは」「おはよう」などを私たちに見せる。

「でも、手話は全員が使えるわけではないだろ?」

颯がそう言う。太陽が「ま、まあそうだよな…」と腕組みをした。

「たしかに、手話はたまにニュースで見かけたりするけど、私たちみたいな聴者の多くは手話がわからないよね」

そう私が言うと、結衣も「一部の人だけだよね〜」と考える。

「なら、聴覚障害の人と会ったと考えよう。聴覚障害の人が道を聞いてきたとすれば、どう返事を返す?」

颯の言葉に、私は頭の中にその光景を思い浮かべる。もしも聞いてきたらーーー。

「ゆっくり口を動かす、とか?」

私が答えると、「口話だね」と様子を見ていた伊藤先生が笑った。そして続ける。

「でも、口話って誤解されてしまうこともあるんだよ」

「えっ?何でですか?」

結衣が訊ねると、「卵、たばこ、なまこ」と伊藤先生は言う。

「これって、口の動きが一緒なんだ。言葉にせずにお互いに言ってみて」
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