あなたが私を忘れても、私はずっとあなたを忘れない
「牛乳は、昨日お母さんが買ってきてくれたよ。危ないし、帰ろう?」

私はそっとおばあちゃんに手を差し出す。それをおばあちゃんは握ってくれた。

二人で並んで歩く。幼い頃から何度、おばあちゃんと手をつないで帰っただろう。でも、それを覚えているのは私だけ…。

「あったかいね……」

おばあちゃんには聞こえない小さな声で、私は呟く。

夕焼けの中、時間をかけて家に帰った。

しかし、家に帰って数分もしないうちに、おばあちゃんは「家に帰る!」と言い出した。私は「ここが家だよ!」と説明するが、おばあちゃんは「帰る!!」と言って外へ出て行く。

お母さんは、買い物に出かけていていない。私は慌てて靴を履き、外へ出た。

おばあちゃんは、道をうろうろ徘徊している。後ろから叩いて呼び止めてはダメだ。おばあちゃんに噛み付かれてしまう。

私はおばあちゃんの前に回り、「こんにちは!お久しぶりです!」と笑顔で言う。すると、おばあちゃんの表情が少し穏やかになった。
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