あなたが私を忘れても、私はずっとあなたを忘れない
「今日、認知症だと診断された。これから先、私はどんどん全てを忘れてしまう。葵ちゃんや翠くんたちに迷惑をかけてしまう。ごめんね」

そう書いてある便せんに日付が書いてある。それは、五年前。

「怖い。葵ちゃんたちのことを忘れてしまうのが、壊れてしまうのが、怖い。葵ちゃんたちの笑顔を奪ってしまう」

「葵ちゃん、大好き。どうか私のことを忘れないで。翠くん、大好き。いつも体を気づかってくれてありがとう」

「だんだん、あおいちゃんたちのことを、おもいだせなくなってきた。あおいちゃん、みどりくん、このよにうまれてくれてありがとう。やさしいひとになってください」

「どうか、わたしのことをわすれないで。わたしのことをにんちしょうになったひととおもわないで。わたしはこんなにもすてきなまごがいて、とてもしあわせです。わたしのえがおを、ことばをわすれないで」

「わすれていくことが、しぬことよりこわい。でも、じかんはまってくれない。みんなにつたえたいことはまだたくさんある」

「だいすき」

「ありがとう」

「ごめんね」
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