あなたが私を忘れても、私はずっとあなたを忘れない

「人を助けられるような大人になるんだよ」

おばあちゃんが、よく私に言っていた言葉。今はもう聞かなくなった言葉。私は、きちんと覚えているから……。

「葵〜！おはよう！」

「葵ちゃん、おはよう」

「葵、おはようございます！！」

後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。振り向くと、同じ福祉コースの宮内詩織（みやうちしおり）と小倉結衣（おぐらゆい）、そしてフィリピン人のクルーズ・チェリーが笑顔で私に手を振っている。

「おはよう！」

私も笑顔で挨拶を返し、三人で学校へと向かう。みんなと介護の話をする瞬間が、とても楽しい。

チェリーは、私と同じ介護福祉士を目指している。結衣はカウンセラーを、詩織は保健師を目指している。

「そういえば、今日の小テストの勉強した？」

結衣がそう訊ねる。私は「もちろん！」と答えた。

詩織とチェリーも頷く。

福祉コースは小テストが多い。心臓などの内臓の位置がどこにあるのかというテストや、車いすの名称テスト、人に関わる仕事に役に立つバイスティックの七原則のテスト、さらにボディメカニクス（介助の際に体に負担をかけない方法）のテストもあった。