Love Eater
裏路地の中でも更に深く人っ気のない位置。
不法投棄された洗濯機やらソファなどが無造作に積み重ねられた更に上。
ちょこんと座っていた姿は齢5、6程か。
いつから着ているのか、薄汚れている服はサイズも大きくヨレヨレで、今にも肩からずり落ちそうな程。
整えれば艶を帯びるであろう黒髪は雑に短く切り揃えられクセだらけ。
どう見てもまともな親の管轄内に居るとは思えない姿。
咄嗟に浮かぶ懸念はやはり両親の有無や体調の事だろう。
「お前…1人か?両親か…他に大人は?」
「……」
耳が聞こえないのか?
それとも、話せない?
そんな疑問を抱いてしまうくらいの無反応には、思わずその距離を縮めんと一歩踏み込んでいた。
そんな刹那、
「…知らない」
「あっ、話せ…」
「言ってる事も、聞かれてる事も、何もかも分からないし知らないし…知らなくていいし」
「はっ?」
「どうでもいい」
「お前、何言って…」
「死ぬのを待つ身に自分の生以外必要ないでしょ?」
「っ……」
ああ、そうだ。
初めてなんかじゃなかったな。
あの目…。
無興味で無気力で無感情で。
綺麗だけども冷たい無機質なガラス玉の様な目。
【六花】になる前のあいつの目。
死ぬために生を消化していた人でも魔女でも無かった頃のあいつの目。