Love Eater
「六花…」
意識を覚醒させたのは自分自身の口から発した声で。
それでもまだ夢現。
光を通した双眸でぼんやり映すのは見慣れた自室の天井だが、思考はまだどこか夢の方へと浸かり気味。
だけどそれも時間の問題で、諸々意識がリアルに回帰してしまえば…。
「っ…もう嫌だ。…死にてえ…」
枕に顔を埋めながら悶絶し始めてしまうのだ。
これが最早日課になりつつあるソルトの心境といえば、
ねえっ!なに好きな女の名前呼んで起きてんの俺っ!
しかも、殆ど毎日っていいくらいに夢みちゃってんの!?
なに!?これすらもあれかっ!?
あいつお得意の呪いの類なのかっ!?
……っ…だったら、
全然良いじゃねえか。
呪われる程執着されているというならどれだけ気が楽になるのか。
現実は夢に見るほど恋しく、もどかしく、非情に虚しく。
「あー……くそっ…会いてぇ」
夢の中でなく。
子供の姿でなく。
今の小憎たらしくも愛らしい姿に。
そう願うもほぼ日課。
あの日以来ずっと。
あの思わぬ決別の日から、あんなに鬱陶しく絡んでいた六花はバッタリとその姿も気配も見せなくなってしまったのだ。
まるで、元々存在していなかったかのように。