Love Eater
ソルトの肩の上で無気力な六花がそんな突っ込みを入れているなんて露知らず。
うーん。と無音にも頭を働かせたソルトがようやく思いついたように「あっ」と口を開くと、六花に視線を動かしムフフと笑うのだ。
そんな勿体ぶったような姿に六花が『キモッ』と思った刹那に、
「六花ろっか」
「……は?」
「お前に最初に施す処置は……名前だ」
「は?いや、何言って…」
「お前の名前は六花。六つの花って書いて六花。どうだ苦痛だろ?ただ静かに死を待つにはお荷物が一つ増えたんだ」
「っ……!!」
「もう自己陶酔激しく『何もないんだ』なんて言えねえぞザマァ~」
「は……はぁぁぁぁぁぁぁ!!?要らない要らない要らないっ!!そんなものいらないっ!!」
「はっは~、ざんねーん。名前ってのは本人の意思関係なく押し付けられる物の最初の一つだっての。嫌がろうが拒もうが名づけられた瞬間に一つの器になっちまうんだよ。お前なら六花って言う器にな。現に……名付けた途端ガキらしい良い反応したじゃねえか」
「っ~~~」
有難迷惑な押し付けをしておいて全く悪びれず嫌味に笑う男にどんな制裁を与えてやろうか。
ソルトの肩口では、ワナワナと初めての憤りに震える六花が恨みがましい目をソルトに向けているのだがソルト本人は気づく事もなく。
呑気に『良い名前だろ~』なんて響いてきた瞬間には小さな手で拳を作って振り上げていたのだが。