Love Eater
幼き六花は苦行の中にいた。
「ひっ…あっ…も、もうやめてぇぇぇ!」
そんな叫びも防御も実に虚しい。
次の瞬間には小さな顎は片手で一つで押さえ込まれ、無情にも口内に無理矢理異物を捻じ込まれてしまう。
直後には一気に広がる刺激に驚愕し、思わず口を押さえて目を丸くした六花が困惑を口にするのだ。
「っ…あ…あ…キ、キンキンする!ツンツンキンキン!チリチリもっ!!なのにっ…あ、あま、甘い?これ甘いってヤツだよな?」
「そうねぇ。冷たくて甘いが正解。面白いなぁ。言葉が喋れる赤ん坊がいたら初体験のボキャブラリーってこんなんだろうな」
「っ…僕を赤ん坊扱いするな!」
「いや、赤ん坊だろ。冷たいって感覚すら初めてだったくせに」
「は、初めてじゃない!流石に触った物がヒヤッとしてる感覚が冷たいとかは知ってたんだ」
「はいはい、アイスが初体験でお気に召したのは良くわかったよ」
「別にっ…」
「ほい、あーん、」
「あー…」
「ぶはっ…クックックッ…」
「っ〜〜」
不覚っ!!
ソルトの誘導にまんまと乗って、差し出されたアイスに思わず大口を開けてしまった。
目の前にはそんな自分を小馬鹿にしたように笑うソルトがいて。
物言いたげに見つめてくる眼差しには六花が勝てる筈もなく。
ここまできたら開き直りと悔し紛れにアイスをひったくって自らモリモリと食べ始めるのだ。
そんな六花をクスクスと笑っていても、決してバカにしていたソルトではないのだが。