Love Eater
はっきり見えぬもの程変に興奮高ぶるのは何でだろう?
なんて、うっかり理性の念仏を忘れ煩悩からの問いに浸ってしまっていた刹那だ。
「じゃあまたね、バイバイダーリン」
「っ___!!!!」
そんなどこか興奮混じりの嬉々とした声音にハッとし、『しまった』なんて思うのも手遅れ。
すでに高さも距離もある位置にいる六花に改めて視線を走らせれば、こちらに振っている手にはなにやら布地らしきものが握られているのだ。
その正体を嫌でも理解しているソルトであるからして。
咄嗟にその手が伸びたのは自分の下腹部で。
触れるズボンの下の嫌にスカスカとした開放感には煩悩様も散ってしまった。
もう幾度と感じたこの喪失感。
コレが初めてではないのだ。
またやられた。
そんな悔しさが沸点を越えてしまえば、
「っ…てめぇっ…ふっざけんなっ!また俺のパンツ盗みやがってっ!!」
「脱ぎたてのソルトのパンツ……良き」
「『良き』じゃねえよっ、ど変態女!!返せっ!今までのも全部返せっ!!」
「んもう、パンツの一つや二つでケチくさいなぁ。じゃあ、代わりにこれあげるから」
「はあっ!?てめえ何言っ……っ!!!?」
求めたのは自分のパンツ。
実際『代わりに』なんて降って落ちてきたものは実に面積の狭い布地。
いや、レース。
なんなら温い。
わざわざ顔面に落とされたそれが脱ぎたての六花のパンツだと理解したのは両手でぴらりと広げた直後だ。