Love Eater
流石にこの衝撃には語源力を失ったらしいソルトが口をパクパクとさせていて。
頭上ではそんなソルトを六花がクスクスと上機嫌に笑って飛び去ったのだ。
ソルトに語源力が回帰したのはその1分後ほどか。
「あー……もう………信じらんねえ」
そんな一言をようやく呟くも脱力したようにその場に膝をつき息を吐いたのだ。
「きっつ………あーもう……もうっ……」
食らいつきたい、抱きつきたい。
あの小生意気な姿なんて保てない程抱き崩して啼かせたい。
食らいたい……。
そんな心の衝動と興奮と血のざわめきと。
言いようのない葛藤に眩暈を覚え、じわじわと身体の芯から熱を持って息苦しい。
そんな状態なのに五感ばかりは変に研ぎ澄まされていくのだ。
「……食いてえ、」
身体に溜まる欲求を発散させるように、結論の様に吐き出された一言と溜め息と。
ようやく持ちあげられた顔は欲求不満一色。
それでも振り切るようによいしょと立ち上がると最後のものとして溜め息を吐きだしたのだ。
そんな刹那不意に感じた違和感には口元に手をやり、改めて理解した現状には更に落胆して溜め息が漏れる。
「抑えきれなかったか」
そう言いながらソルトが触れたのは鋭さを増した自分の犬歯で、どう見ても通常の人のそれとは言えない。
それに先程までは至って普通の歯列であったのだ。
だけどもソルト本人は自分の変化に驚く様子もなく、ただ失敗したとばかりに眉を寄せる程度。