Love Eater



それでも、この愉快な解釈と誤解は解いておかねばマズかろうと、直感で理解したソルトであったが。

「んんっ……えっと、……あのな?六花、」

「ひっ……ヤダぁっ!!ソルトの人でなしぃぃぃ!!」

「ちょっ……落ち着いて人の話を…」

「ふぎゃぁぁぁぁんっ!!ヤダヤダァッ!無理っ!!」

「っ……」

聞く耳持たず。

まさに手負いの獣の如くな興奮と警戒状態の六花にはソルトの理性的な声なんて届く筈もなく。

次の瞬間にパッとその手が振り上げられたのだ。

それには流石に予測が働き身構えたソルトであったのだが。

待てど暮らせど思っていた様な衝撃が頬を直撃するような事はなく、それどころかこれまた予想外。

しかも衝撃。

これだったら殴られた方がまだ幾分かマシだと思ったのは…、

「………はっ?」

今まさに。

「っ……ちょっ……六花ぁ?…六花ちゃぁぁん?………六花……さん?」

そんなソルトの呼び声は実に虚しく裏路地に反響していて。

悲しいかなそれを聴き取るのも……ソルト本人のみ。

「っ………マジかっ!!」

こんな衝撃の絶叫も。

手を振り上げた瞬間殴られると咄嗟に思ったソルトであったが、実際はその瞬間に六花がパッと姿を消してしまったのだ。

まさかこのタイミングで逃げられるなんて微塵も思っていなかったソルトには衝撃を通り越して現実逃避と言うところか。

ソルトの中では、自分が『好きだ』と宣言した事で六花とのいざこざの根本は多少なりとも解決し、無事両想いの関係の修復となるつもりであったのだが。


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